No.841-870
人差し指の赤い糸人魚になる前の話
凍える魚の鱗雲
平面の冷たいキスを
文字が消えていく
4文字に略して
歩道のすみに転がる空き缶
夕焼け空に青い雲
私を返して
すべてが反対な世界の中で
香りを巡って雛桔梗
手紙に込めた思いの形
戻らない幸せに冥福を
祈りを捧げて目を開けた
足元を泥で汚して
幸せの優先順位
新緑の季節に問う
水泡と気泡は混じり合う
いつかに掴まれた足
涼しげな水面の底に
一人きりの砂浜で
桜貝の歌
陸で生きた魚
満ちる姿に重ね合わせて
足跡二つに姿は一つ
生きられない場所
空気を裂いて
鳴き声は木霊する
欠点が消えない
決断した瞳に